午餐の〆は、台地に磨かれた旨みと色味の一杯で
お世話になった方の墓参へ、年に数度は訪れる静岡県東部エリア🗻
富士の湧水に育まれた鰻を饗する銘店が多いことでも知られ。
「鰻を食らうなら西の浜松、東の三島!」と、誰に頼まれるでもなく勝手に触れ回っております。
墓参帰りは必ず、かつてその方に連れてきていただいた馴染みの店へ顔を出すと決めており。
思い出深いこちらでのひとときが、いつしか墓参の楽しみとなって行きました。
鰻以外にも、焼津港で水揚げされた南マグロ、天城の清流に培われた瑞々しく香り高い本ワサビ…といった地場ならではの味覚を、これでもか!と堪能出来るのも嬉しい限りで。
大都市圏とのアクセスが良好にもかかわらず温暖で風光明媚、かつ山海の恵みに満ち満ちた土地の底力を、訪れるたび実感させられます。
…と、そんな思いに耽りつつ、食事がクライマックスを迎えるタイミングで、鮮やかな緑が映し出された白磁の器に手を伸ばすと。
軽やかな渋みの向こう側に広がる旨み、すぐさま追いかけてくるほのかな甘味。リラクゼーション効果を伴った鼻を抜ける香りに導かれ、遠征の疲れはおろか、日常生活ですり減った心のひだをも〈〆の静岡茶〉がほぐしてくれます。
お世話になった方が旅立たれて、幾星霜。
茶どころ静岡は「どの飲食店へ行っても、出されるお茶だけはホント旨い!」と、その方が常々仰っていたように。
この店に限らず、自身の実体験としても〈全県の飲食店でお茶が旨い〉は静岡のデフォルトであり、前述の“茶じまん”は決してオーバーな話ではなく、鮮明な記憶として刻まれています。
この日のお茶もいつもと同様、五臓六腑に染み渡り、珠玉の午餐がさらに輝きを増したのは言うまでもありません。
手土産にした静岡茶、自宅で淹れても充分旨いのですが、ご当地で口にする静岡茶はやはり格別で。素晴らしい水と風土が、これとない隠し味となっているのでしょう。